なんだ、つまんないなぁ。
 

荒川って意外と手強いかもしれない。

カズサは不貞腐れ気味にソファーに沈む。


「というより」


こっちのやり方がまずったかもしれない、トランプを繰りながら嘉藤基樹を担当した男は肩を竦める。

だって自分が嘉藤にしたことというのは、階段から引き落としたことくらいなのだから。


「マジで?」生ぬる過ぎるだろ! カズサの不満に、男は一笑するだけ。


「しょうがないじゃないですか。貴方が俺をあっちこっち走らせるのですから疲労していたんですよ。デスクワーク派ですよ? 俺」
 

喧嘩するかもしれないと、わざわざ不慣れなコンタクトを使ってしまった。


今は落ち着く眼鏡を掛け、喧嘩になったらどうしようかと思ったとおどける。


唸るカズサに、「それに」なっかなか隙がなかったんですよね、と男は続けた。

あの騒動じゃ嘉藤基樹をどうこうすることもできなかった。


やっと隙を見せても、すぐに荒川庸一が登場すると分かっていたのだ。

無茶をし無謀なことをしてしまっては、元も子もない。
  

「まあいいじゃないですか。一度だけでは狩れない相手だって分かっていたでしょうし」

「そうは言ってもさマッキー、ぼくとしてはなにかイベントが欲しかったんだよ。だろ? ミヤ」
 

さあなと言わんばかりに鼻を鳴らすミヤは、マッキーと呼ばれた男から配布されるトランプを飽きもせず見つめていた。


「真杉との一件は」


どうにか丸く治めたそうじゃないか、面白くもなさそうにミヤは口を開く。


「そうなんだよ」


カズサは計画が甘かったなぁ、と愚痴を零す。

なんでもヤラれた真杉の話、そして荒川の弁解により、なんとか、喧嘩の一件は丸く治めたらしい。なんとか、だそうだが。


大方、真杉の方が仲間を説得させ、二次暴動を食い止めたといったところだろう。

計画に使えない男だ。