青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―



「あいつは俺っちも認めるっ、実力者ッス。手腕こそ並っすけど、ケイさんの良し悪しも指摘できて、喧嘩になると周囲を纏める力もある」
 

先日の事件だって、あいつが、あいつが率先して動いてくれたからこそ、矢島の舎弟達は手を貸したっス。

あいつの働きがどれだけ糧になったか。


その点、俺っちはただ手腕があるだけで他に取り得もない。

手腕の補佐にはヨウさんがっ、その他のフォローはモトがっ…、俺っちなんて不要じゃないっスか!


舎弟、本当は要らないでしょ。

俺っちみたいな舎弟は要らないでしょ。


だって手が足りてますもん。


俺っちは貴方の心意気に惚れて、それで弟分になった奴っス。

ただただ貴方の背中を追い駆ける馬鹿っス。

強いだけが取り得の馬鹿なんッスよ。


強いだけが取り得? いえ、それさえもない。

俺っちは貴方に怪我させた。守ってもらっただけでなく、庇われて、その右の手を怪我させて。

創作の途中だってことも知っていたのに、何が弟分! 何が、なにがっ…、でも俺っち、やっぱり貴方への憧れは捨てられないんっス。


どうしても。

 
「だからモトが仮に舎弟になったとしてもっ、しょうがないと思うことにするっス。
俺っち、これ以上の関係は望まないっス。

ケイさんにとっては、成り行きで弟分ができただけですし。
どんなに努力したって…、俺っちは」


ヨウさんのようにも、モトのようにもなれない。

声音を震わせるキヨタ。

「ほらこうやってケイさんに」

八つ当たりしてしまうから、だから気持ちが落ち着くまでずっと避けていたのに。


続け様、避けていた理由を零し、ふらっと駆け出してしまう。


「おいキヨタ!」


慌てて俺はキヨタを追い駆ける。

身体能力が並の俺に対し、あいつは抜群の運動神経。

見る見る距離は離されていくけど、俺は逃がして堪るかと最初から全力疾走。


あいつがそんなにも悩んでいるなんて知らなかった。

存在価値を見失うまで悩んでいたなんて知らなかった。
 

マジ馬鹿兄貴だよな俺。

舎弟の苦労も、窮屈さも、周囲の評価からくる劣等感も知っているってのに。


キヨタはいつも一途に俺を追い駆けてきてくれる反面、ずっと、ずっと、ずっと、俺とヨウの関係にむしゃくしゃして、自分の価値に思い悩んでいたんだ。

俺が釈然としない態度で兄分してるからこうなるんだよ、阿呆め!