矢継ぎ早に伝えて、俺は残り少ない缶の中身を飲み干すためにそれを傾ける。
飲み終えると俺は集まる視線もひそひそ声も振り払い、キヨタに一瞥もせず、教室を出た。
かーんなり後輩に避けられている感はあるけど、心を鋼鉄にして自分の教室に向かうことにしよう。
腹減った。
俺、昼休みだってのにまだ昼飯食ってない。
胃袋は緑茶で満たされている。
けど時間も残りわずかだしな。
あーあ、弁当食う時間なんてなさそうだぞ。
サボるかなぁ。
こういうことを考える時点で俺って上辺真面目ちゃんも何もクソもないよな。
どーせヨウとモトはサボるだろうしな。
あの空気からして。
「ケイさん!」
俺は足を止める。
廊下に飛び出してきたであろう弟分は、「やっぱり」今がいいと変更を申し出てきた。
放課後まで俺とのタイマンで悶々と悩みたくないんだろう。
空になった缶を投げてキャッチする俺は振り返ることなく、「じゃあついて来いよ」肩を竦めて歩みを再開した。
硬い声音のまま返事するキヨタは、静かに俺の後に続いた。
廊下を歩く、階段を下りる、他クラスの教室を過ぎる。どんな時でもキヨタは俺の後ろを歩いた。
しかも一定の距離を保って。
お前はピクミンか。
俺はお前を引っこ抜いた記憶なんてないんだけどな。
いつもだったら恥ずかしいくらい纏わりついてくるのに。
昇降口で靴を履き替え、俺はキヨタを連れて学校外に出た。
同時刻チャイムが鳴る。昼休みの終わりを生徒達に告げる呼び鈴だ。
高い空に向かって呼び鈴を鳴らしている。
また前橋に怒られそうだ。苦笑を零しつつ、俺は空き缶を投げてはキャッチして、何処に行こうかと思案を巡らせる。
タイマン張れる場所といえば、人気のないところ。
無難にたむろ場かなぁ。
公園でもいいけど、昼下がりは奥様方が井戸端会議をしていそうだし。
高架橋の下でもいいんだけど。
こんなことならチャリを持ってくるんだったな。いやでも無理だろ。駐輪場にはヨウとモトがランデブーしているわけだしさ。
再度俺が現れたら水を差しそうだもんな。KYにはなりたくないし。



