「呼び出したことに、何も聞かないんだな」


ふと会話に切れ目の入る。

俺は缶の中身を回しながら、「聞いたところで」簡単に話すとは思わないしな、だからモトから切り出すのを待っているのだと告げる。

「何もないかもしれないのに?」

質問を重ねられ、それはそれでいいと俺は肩を竦めた。

お前とランデブーしたってことで片付けるよ、小さく笑声を零した。
 

嬉しくねぇ表現だとモトは毒づき、缶を傾ける。


喉を鳴らして緑茶を食道に通す某キンパ不良に怪我の具合はいいのか? と話題を切り替えた。


頷くモトは、俺の気遣いを霧散するように、

「アンタじゃなきゃ駄目だったんだよ」

今傍に居てくれるのはアンタじゃなきゃ駄目だった、そっと呟いてくる。


「ヨウじゃなくて?」


意表を突かれた俺はおずおず聞き返した。

首肯するモトは、アンタじゃなきゃ駄目なんだと、力なく此方に視線を流して微笑してくる。


ちょっち戸惑う。

なんでヨウラブの男が俺を選んだのか、その意図がイマイチ読めない。


半分以上の残っている缶の中身を回し続ける俺は、きっとその中身は洗濯機のように渦巻いているのだと想像した。

若干の現実逃避の後、「で?」俺は話を続けてくれるよう頼んだ。


それで話が終わりなら、俺はヨウに弟分を貰ってしまうかもと事前報告をしないといけない。


あいつ、ああ見えて弟分を大切にしている奴だから、きっとショック受けるぞ。
 


何から話そうか迷っているモトは、缶を左隣に置いて頭の後ろで腕を組む。
 



「オレさ。ヨウさんの背中を追うの、やめようと思っているんだ」




ザァアッと側の木々が風に揺らいで忙しなく葉を鳴らす。

驚く感情さえ吹き飛んでしまった俺は、ただただ静止してモトの発した言葉の意味を理解しようと努める。

でも意味が分からなかった。

「なんで?」

右回りから左回りに缶を回し、その意味を尋ねる。