「はぁああ…、庸一さん。憂鬱ですね。五月病にでもかかってしまったんでしょうか、俺達」

「はぁああ…、圭太さん。マジで欝ですね。外は晴れているのに俺達の心は台風模様そのものですよ」
 
 

授業合間の十分休み。
 
揃ってはぁああ。はぁああ。はぁああ。

机に上半身をのっけて鬱陶しいほど溜息をつく俺とヨウ。

ご近所さんの利二が見かねて何かあったのかと尋ねてきた。

待ってましたとばかりに俺達は顔を上げて、利二に話題を吹っかける。
 

利二は苦笑いを零した。

どーせ聞いて欲しかったんでしょう?
だから溜息ばかりついて気を引こうとしたんでしょ?

的確に指摘され、俺達は図星だと一笑。

早速、俺達は欝の内容を利二に話した。

目を丸くする利二は、「避けられている?」持っていた文庫にしおりを挟みながら、信じられないとばかりに凝視してきた。


「弟分に避けられているって。あの荒川さん命の嘉藤に、田山ラブの村井に?」
 

そうなんだよ、俺は嘆いて消沈する。

ここ三日。
俺はキヨタから、モトはヨウから避けられまくっているんだ。


そりゃもう、俺達を一瞥した途端にBダッシュする勢い!

一日目はそっとして欲しいのかなって思っていたんだけど、放課後は普通にチームメートと話す姿が見受けられた。

俺達以外にはフツーに話していたんだよ!


しかも学校では極力、俺達と会わないようにしているし。昼休みは姿を現さないし。


それが二日、三日、経ってみろ。

ベッコベコにへこむじゃあーりませんか!
確実に兄分の俺等、避けられるんだよ!

ウワァアア、なんだこのモヤモヤ! ショッキングモヤモヤが俺とヨウを襲ってるんだけど!

嘆きを聞いた利二は一思案して手を叩いた。


「もしかして押しても駄目なら引いてみろ作戦に出ているとか。

ほら、よくあるじゃないか。
気を引きたいなら押すばかりじゃなく、身を引くことも大事だって。恋愛駆け引きの鉄則だろ? それの兄弟分版では?

結論付けると、愛されたいと思うようになった。ではないだろうか。

田山、荒川さん、愛は貰うだけでは満たされない。
時に与えなければいけないと、自分は思うのだが」


いたく真面目に阿呆なことを言う利二。
そして目を点にする俺とヨウ。

ちなみにこれ、利二なりのジョークだったらしい。


「此処は笑うところだ」


ジョーダンだと真顔で言われる。

なあるほど、めっちゃ面白いじゃん…なんて、笑えるわけないじゃないですか!

ちょっちマジで考え込みそうになったぞ!


真面目真顔で言われただけに!