矢島の問い掛けに川瀬と谷は顔を見合わせ、少しばかり間を置き、そして何も言わず首を横に振る。


「本当だな?」


追究に首肯し、二人はただただ何も言わず、態度で何もされていないと返事した。

その動作にキヨタは不満げな顔を作るけど、矢島舎弟組は病院に行くと舎兄に主張する。


あれほど病院を嫌がっていたくせに、問い掛けによって態度を一変させる。

矢島は訝しげな表情を作っていたけど、二人の気持ちを酌んだのか川瀬におぶるからと物申した。
 

途端に滅相もないと川瀬。

谷におぶってもらうと顔色を変え、谷も大した怪我じゃないから自分が片割れをおぶると矢島が動く前に怪我人をおぶってしまう。

本当に矢島には尊敬心を向けているんだろうな。

矢島は意味深に息をついて、踵返すと早足で出入り口に向かう。

谷も倣って川瀬を背負ったまま、出入り口へ。


だけどヨウの脇をすり抜ける際、モトが二人を呼び止めた。

そして言う、「サンキュな」と。
 

俺達にはこの礼の意味がイマイチ分からなかったけど、矢島舎弟組には十二分に伝わったらしい。

代表しておぶられている川瀬が口を開いた。


「嘉藤。お前のせいだってことを忘れるな。身勝手な信用を俺達に置いた。だから俺達はお前に手を貸さざるを得なかった。それだけだ」
 

べつに俺はお前等に感謝するつもりもなければ、怪我について詫びられる云われもない。

一件について礼を言われるなど言語道断だ。


寄せ集めチーム話に誘い誘われ乗っただけの話だと鼻を鳴らし、川瀬は谷に行こうと方を叩く。


なーんかまどろっこしい言い方だったけど、あれ、モトの悪口じゃないことだけは確かだよな。


寧ろあいつ等は…。


振り返って俺は青髪舎弟組を見つめる。

一室から出て行った舎弟組。
ドア枠に凭れて二人を待っていた矢島は鼻を鳴らし、「何があったか知らんが」世話になったとしたら礼は言っといてやる。

限りなく上から目線で物申した。


「だが忘れるな。あんはお前等に気を許す気はない。そのブサイク不良の首、いつか討ち取って、そのチームごとあんがもらう」


ケッと吐き捨て、矢島は立ち去る。

わなわなと震えるヨウはこめかみに青筋を立て、「一々腹立つ男だ」マジぶっ飛ばしたい、と地団太を踏んだ。