【某商社跡ビル地にて】
  
 

ぶえっくしゅん!


ぶえっくしゅん!



ぶえーっくしゅん!
 
 

くしゃみを連発することによってモトは周囲から喧しいと言葉を頂戴する。
 

緊張感がないのかとツッコまれ、モトは片手を出して詫びつつ、


「風邪でもひいたかな?」


それとも誰かがオレの噂をしているとか?

だったら良い噂じゃないだろうな。

首を右に左に傾げながら鼻を啜り、キヨタと抱えていたキャビネットを扉前に下ろして一息つく。


「取り敢えずこんなもんか」


モトは眉根を寄せ、扉に置かれた空のキャビネットを見下ろす。

同じく視線をキャビネットに下ろすキヨタ、そして遠巻きから見ているココロや偶然にも居合わせた矢島の舎弟達もキャビネットを見下ろす。


気分は「で?」である。
 

沈黙が流れる中、指揮していたモトはそれらを振り払うように咳払いして、


「仕方がないだろ」


他にバリケードできるものがなかったんだから、と唸る。
 

落胆の色を見せる川瀬は、「これで大丈夫かよ」と抗議の声を上げた。
 

そんなキャビネットでは、仮に内鍵が突破された時に自分達の身を守ってくれるとは思えないんだけれど。

溜息をつく彼に、「やらないよりかはマシだって」肩を竦めるモト。


そんなモトをフォローするように、

「モトの案に異議があるなら」

他に良い案を出してみろよ、とキヨタが吠える。

言い方にカチンきたのか、やっぱ任せるんじゃなかったと谷が鼻を鳴らし、キヨタがそれに激情。


視線をかち合わせ、青い火花を散らす。

「あ、あの」

喧嘩は良くないと、おろおろするココロは完全に狼狽していた。


「はぁあ…、どーしてこうなるんだか」


モトは溜息をついて頭部を掻き、「意見割れしている場合じゃないって」と仲介役を受け持つこととなった。