二人は出入り口からジーッと向こうを監視、ではなく観察する。

「十日以内か」全部書けなかったらごめん。

想定される問題を先に詫びるケイに対し、「出来る範囲でいいので」ひなのは笑みを返して詫びを受け止める。
 

「そうだ。これから習字教室に行きますか? 場所や道具くらいなら顔なじみとして貸してくれるんじゃありません? 一緒に書きましょうよ」


「(うっわぁあ! せ、積極的!)」

「(お、おぉお押しが強いですね!)」


「いや遠慮しとくよ。俺がどれくらい下手くそになってるのか、家で調べたいし。俺が習字教室に行ったらそれこそ、馬場さんの耳は入りそうだしな。家で書いてみるから」


「(さすがはケイ。スッパリ断ったね)」

「(安心しました…、って思う私。心が狭いのかもしれません。ケイさんが五反田さんのことでうんぬん言っていた意味、今ならよく分かります。むぅ、負けたくないです)」

「(その気持ち、花丸満点だよ!)」


「そうですか」「うん、そうだよ」


女同士の友情がいかんなく煌いている光景を遠巻きに眺めていた響子は、うんうんっと微笑ましそうに綻んでいた。


「ああやってココロも成長していくんだな。可愛い子には旅をさせろっつーけど、まさしくそれ。試練もねぇとな」


余所で聞いていた男子群、クソメンドクサそうなことになりそうだと思っていたりいなかったり。


確か去年も地味組の恋愛で何かと振り回され「てことだ野郎共」



!!!



「恋愛初心者のあいつ等をさり気なーくフォローするようにしろよ? あいつ等は、なにかと初心者だからな。世話はしてやらねぇと」


「あれれん? 今、響子ちゃーん…、試練がないとって」


「そりゃあ試練はあるべきだろ? だけどな手助けするな、なんざ思っちゃない。頼られたら相談に乗る。困っている時はさり気なく話を聞く。
気付かれないよう手助けするんだよ。
これも可愛いココロのためだ。しっかりあんた等も協力しろよ」