「矢島は休学していたらしい」
俺の疑問はすぐ解消される。
利二が小耳に挟んだ情報を俺達に提供してくれた。
矢島は夏の終わり頃から休学届けを出していたらしい、と。
だから出席日数・総学の時間が足りないのも頷けるし、もう一度二年生をしているのも納得だ。
「剣道はやめているそうだが」
それはそれは機敏な動きで相手を打ち負かす手腕の持ち主らしい、と利二は教えてくれた。
それも知っている、あいつはヨウの懐に踏み込んで一発かましたんだから。
俺はその光景をバッチシ見た。
あいつの回り込みは本当に俊敏で、相手の動きに対しても臨機応変に対応していたっけ。
動きの基礎を剣道で培ったんだろうな。
「だけど、なんで荒川さんに敵意を?」
利二の素朴な疑問はヨウの怒りを思い出させたらしい。
「あぁあんの野郎!」
逆恨みもいいところだと体を微動、握り拳を作って次会ったら絶対かます。
有無言う前にかましてやると机上に大地震。
よって俺と利二は内心でビビり、周囲の人間は表に出してビビっていたという。
いや、幾ら付き合いが一年経ったとはいえやっぱ怖いもんは怖いよ。ヨウのご立腹。
舎弟の俺が怖いくらいなんだから、周囲の人間が表に出してビビるのはいた仕方が無いことだと思う。
ヨウの苛立ちはたむろ場でも続いた(あ、俺は当然矢島の下には行かなかったよ! 呼び出されても行くもんか!)。
一体どんだけ怒ってくれちゃってるの、こいつ。
こっちが呆れ返るほど怒っていたものだから、掛ける言葉も見つからない。
まあ…、ヨウは負けず嫌いでもあるからな。
学内に矢島のような態度を取る奴も珍しいし、久々に闘争心が掻き立てられたんだと思う。
ヨウに対してあんな傲慢な態度、日賀野以外に取る奴もいないし。
こういう場合はそっとしておくしかないと思う。
ヨウを馬鹿にされたモトや俺のことを愛してくれているキヨタも、チョー機嫌が悪かったしな。
飛び火しないことを祈りながらたむろ場で過ごしていると、他校生の仲間がやって来た。
仲間が顔を揃えばきっとヨウ達の機嫌も回復するだろう。
そう高を括っていたんだけど、
「あのケイさん」
ココロが複雑そうな顔をして俺に歩んできたから、その願いは叶わなくなる。



