「フンっ、美味そうなかけうどんだな。荒川」
犯人が鼻を鳴らしながら七味の容器に蓋を閉める。
おーっとこの声は…、首を捻った俺は犯人を目にした瞬間、頭を抱えたくなった。
「テメッ」犯人が分かったヨウは握り拳、余所ではモトの怒りメーターが上がっている。
「テメェは矢島俊輔っ…、出やがったな。クソ不良!」
説明しなければならないだろう。
矢島俊輔。
今年で齢18。
俺達の先輩に当たる方だが、留年して俺達と同じ学年に属している美形系不良。
髪を灰色に染め、これまた嫉妬しそうな容姿を持っている男だというのに口を開けば残念傲慢さん。
ヨウを何かと目の仇にしている厄介かつ命知らずの不良さまなんだ。
一人称は“あん”と変わっている。
更にツーンとそっぽ向いている犯人の両隣には、海のように青い髪を持った不良二名。
短髪側が川瀬 千草(矢島のことをアンちゃんって呼ぶ)。
長髪側が谷 渚(矢島のことをあんちゃんって呼ぶ)。
どちらさんも矢島の舎弟だ。
……こいつ等は、俺の名前を騙った不良でもあるんだよな。
できればもう関わりたくなかったっつーのに、なんで自ずから歩んでくる上に喧嘩を売って来るんだか。
「よくもテメェ」
憤っているヨウの怒気なんてまるで相手にしていない矢島は、フンと鼻を鳴らして肩を竦めた。
「わざわざあんが好意でかけてやったんだ。感謝しろ」
「そうだそうだ! あんちゃんは好意でやったんだぞ!」
「アンちゃんに感謝しろ!」
ぜぇってちげぇーだろーよ。お前等。
やることが陰湿ないじめに近いぞ。
だがしかし、あくまで犯人は親切心でかけてやったと一点張り。
ヨウは腹が立つと相手を睨んで、なんの真似だとクエッション。
「だから親切心」
何度も言わせるな、お前馬鹿だろ、ヨウに向かってすっげぇデカイ態度を取る矢島。
ははっ、いつもながらお前、マジ最強。
尊敬したいぜ、その肝の図太さ。



