おい、お前、それ嫌味かよ。
モトは口元を引き攣らせた。
なにぶん、モトも取り得といえば喧嘩。
なのだが、遺憾なことに並の手腕である。キヨタと比べたら天と地の差がある。
なのに、嫌味とも言える遜(へりくだ)った物の言い草。頭に拳骨をかましたくなる。
イラッとしているモトに気付きもせず、「焦ってるのかも」キヨタは頬杖をついて弱音をポツリ。
「俺っち…、ケイさんに見合おう見合おうと焦ってるんだ、きっと。ケイさんってさ、超男前じゃん?」
「そっか? ヨウさんには負けるんじゃね?」
「それにいざって時は頼れるし」
「ははっ、ヨウさんには負けてるし」
「優しいし、気遣えるし、周りの空気も読めるし」
「ヨウさんに負け負けもいいところだけどな!」
「……、モト、喧嘩売ってるのか?」
「だーってオレ。ヨウさん一筋なんだぜ? そう言われてもピーンと来ないって。オレにとってケイはただの調子ノリだし、弱いし、だけど負けず嫌いだし。
……ちょっと自分を過小評価しているところもあるよな。
仲間に一線引くところもあるし、そこがめっちゃ気に食わないんだけどさ」
毒づくモトにジロリと睨むが、すぐに怒りは霧散。
「モトは」
強いよな、とキヨタは親友の芯の強さに敬意を払い始めた。
尊敬している兄貴に舎弟がいるというのに、二人は名コンビと称されているのにも拘らず、立派に弟分をしているのだから。
対して自分は名コンビに焦燥感やら嫉妬やらなんやら。
日に日に兄分の存在が遠いものに感じるのだ。
ああ見えて、自分の兄分はチームを陰から先導している存在。
全面的にリーダーや副リーダーがチームを先導しているのだが、彼等が見落としてしまう小さな変化は舎弟が拾ってフォローをしている。
特に良し悪し関係なく直球型のリーダーのフォローは巧みだ。
文句垂れながらもリーダーの本来の力を発揮させるために、いざとなったら持ち前の洞察力をフルに使う。
戦力外ではあるものの、チームの要的存在だ。
そんな兄分に果たして自分は見合えるのだろうか、不安は募っていくばかりだ。



