「―――…ふーん。此処で不良達がドンパチドンパチしたんだね、ミヤ。
夜だから暗いけど、確かに大暴れするにはもってこいの面積の広さだ。

しかも、ははっ、不良って脳みそまで筋肉馬鹿かと思ったら、そうでもないみたいだね。五十嵐は荒川や日賀野と三回喧嘩したみたいだけど、その内二回は作戦負けしているみたいだ」


 
不良も考える子なんだね、意外も意外だ。

ドラマに出てくる昭和の不良みたいに拳で勝負、喧嘩、するようなタマじゃないみたいだ。

そっちの方が楽っちゃ楽だったけど、まあ、それくらいしてくれないとこっちも楽しくないよね。ミヤ。


ミヤと呼ばれた男は同意を求められ、「さあな」素っ気無く返答。持ち前のナチュラルブラック髪が夜風に揺れた。

ツレナイねぇ、肩を竦める赤茶髪の男は振り返って口角をつり上げる。


ミヤが伸した不良達を踏み退け、無慈悲に倒れているひとりの背中を尻に敷いて足を組んだ。

下から呻き声が聞こえるが聞こえないを振りふり。
 


空を仰ぐと星明りが微かに見え隠れしている。



肉眼で見える星明りはやけに弱々しい、今日は新月だというのに。

まるで今、そこで倒れている不良達のようだ。

先ほどまでの威勢の良さは何処へやら、自分達に一杯食わされて情けなく伸びている。


奴等は自分達に“狩られた”不良達だ。

無残なやられ具合に大声で嘲笑したくなった。



これだから“不良狩り”はヤメられない。



自分達が伸してやったという優越感で心満たされる。ザマァだ。

とはいえ、自分達が今狩っている大半は雑魚。

ウォーミングアップ程度にしかならない、残念だ。

  


「カズサ。次はどうする?」

 



上総(かずさ)と呼ばれた赤茶髪の男に、ミヤはこれからのことを尋ねる。

どうせお前のことだから突撃攻撃型不良・荒川庸一率いるチームや、頭脳派守備系不良・日賀野大和率いるチームを狙うんだろ。命知らずの馬鹿だから。


「褒めるなって」笑声を漏らすカズサは組んだ足を揺すって、これからの未来を恍惚な笑みで返した。
 


「不良はみーんな狩ろう、ミヤ」