(……、なくなるといいな。シズの背負っている辛さ。お母さんとは結局、決別するって言ってたし。シズは本当の意味で家族と決別する気なんだろうな)

 
ここまで育ててくれたお母さんに、何か思うことはあるようだけどシズの決意は固そうだ。

養育費のことや一人暮らしの費用以外は自分で何とかしようと考えているみたい。


バイトも考えているって言ってたけど、ウチの母さんが「落ち着くまでバイトはやめときなさい」って止めていたし。


親元でぬくぬく過ごしている俺なんかが安易に言えることじゃないけど…、シズ、急がなくていいと思うよ。

お前のペースで頑張っていけばいいと思う、思うんだ。


俺にできることがあったら絶対、協力するからさ。

無理だけはしないでくれよ。



(シズの食欲、まだ戻ってないしな)



きっとどっかでシズは辛いと思っているんだろう。

前のような大食らいな面は見受けられない。


俺と同じくらいのメシは食うようになったけど、間食もまちまち。
シズらしくないや。



それでもシズ自身、前進しようとしている。

だってシズ、言っていたんだ。


「最近はメシの味が」美味く感じるんだ、と。



俺は開きっぱなしの漫画をそのままに、シズの寝息に耳を傾けて時間に身を委ねる。
 
 

食欲は戻っていないけれど、シズはメシが美味いと思い始めた。


今はそれでいい、いいんだよな。





「シズ、俺もお前に出逢えて良かった。そう思ってるよ」





さっきは言えなかった、むず痒い返事を相手に贈る。

俺の背中の上で寝息を立てているシズが微かに身じろいだ気がするけれど、今の俺じゃあ確認はできなさそうだ。




「シズ、今日の夜はひどく優しい気がするな。これって俺の気のせいかな?」




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