苦笑するシズは、「そうか」と頷いた。

「そーだよ」めんどくさそうに頷き返すヨウは、間を置いて場所を変えようぜ、と自分に声を掛ける。


「このままあいつ等をつけ回しても、何も解決しねぇよシズ。人の気持ちなんざ、そう簡単に変えられねぇ。
テメェがどう暴れても、あいつ等は変わらねぇよ絶対に。
面倒を起こしても、テメェに災難が降りかかるだけだ。やめとけ」


「……分かっては…いるんだ。分かっては」


「分かってるなら、こっちに戻って来い。
チーム内の話題はテメェの心配ばっか。シケてるんだよ」

 
頭を小突いてくるヨウに瞬いて、「…軽くないな」皆の心配は重そうだとシズ。

「ったりめぇだ」

奴等と一緒にするな、心外だぞ、すこぶる不機嫌になるヨウは軽い関係だったのか? と聞き返してくる。

そりゃあのらりくらりの関係ではあるから、好きな時に好きなだけチームに顔を出せば良いし、毎日チームに身を置いておく必要も無い。

緊急事態以外は自分の好きなようにすれば良い。



けれども、ヨウは眉をつり上げて鼻を鳴らした。
 

「軽い関係とは思っちゃねぇぞ。軽かったら、テメェのために走るかよ。あーあ、テメェのせいで労力使っちまった」

「…ヨウ」


「俺等にビビってんじゃねえよ。ちょっとやそっとじゃ俺等は壊れねぇ。簡単に壊れるんだったら、俺達はヤマト達に大敗してるだろうが。
ましてやテメェの家庭事情でなんで俺達に亀裂が入らなきゃなんねぇんだ?

あんま過小評価してると副リーダーからリーダーに昇格させちまうからな」


「…なんで昇格…だ?」


「決まってるだろうが。俺が楽するためだよ」

 
笑ってしまった。

久々に心の底から笑えた瞬間かもしれない。



―――…何度も思うがやっぱりヨウ達にはまだ会いたくなかった、とシズは思う。
 


折角何か行動を起こし、向こうを一泡吹かせようと思ったのに何も出来ずにいてしまう。

ヨウ達というストッパーが現れるために、間違いを犯せずにいるのだ。

きっと自分は繰り返し、敢えて間違いを犯そうかと考えることだろう。


その度にしつこくヨウ達が、目前のリーダーが蹴り飛ばして止めに入る。


嗚呼、優しくないリーダーだ。
放っておけばいいのに。