急いでアパートから飛び出した俺は階段を下りながら二人の姿を目で探す。

そう遠くには行ってないよな。

何処だ、二人とも何処に…、姿が見受けられないことにちょっち焦りながら、階段を下り切った俺は左右に首を動かし、んでもって「ねえ」


!!!


こ、この忙しい時に声を掛けられるとは!

誰だよ、道案内なら他の人に頼んでくれよ。

幽霊さんならお、お断りだぞ!

ついでに見知らぬ不良さんもお断りだ!
俺は見知った不良さんしか免疫がないんだからな!


首を捻って相手を確認する。


そこにはシャツにジーパン、とラフな格好をしたお兄さんが立っていた。よく身形は見えない。

夜だし、外灯も少ないから。

んー、赤茶髪に染めているみたいだけど…、お兄さんに見えるだけかもしれない。


向こう、私服だから年齢層が把握し辛い。


「何か?」俺の焦燥感を含んだ問い掛けに、相手はひゅうと口笛を吹いて「君が噂の舎弟くん?」と指差してきた。


「だよねぇ。荒川の後から出てきたんだから。舎弟くんの噂は常々。異色の舎兄弟らしいね?」


あぁああっ、なんか知らないけど、俺、今急いでるんだって!

用件がないならさっさと俺を行かせてくれたもう!


「あの、俺。急いでるんですが!」

「大丈夫。こっちは急いでないよ」


なにその屁理屈!

あわあわとしながらシズの荷物を抱えなおす俺にニンマリ笑みを浮かべるお兄さんは、


「荒川は大層仲間を大切にしているみたいだね」


向こうに行ったよ、背後を親指で差して教えてくれる。


疑う余地もない俺はあざーっすと頭を下げて走った。

急いで二人を追い駆けないと!
お兄さんには悪いけど、相手をしている暇はないんだよ、俺!





「―――…荒川の舎弟、か。弟分と舎弟、どっちが彼を“狩る”のに適した道具かな。ねえ、ミヤ」

「さあな。お前の判断に任せる」

「ははっ、もう分かってるくせに。異色の舎兄弟、目をつけとかないとソンソン」

「狩るのか?」

「んーんー。まだ狩らないよ。まだ、ね」


不気味な会話は俺の耳には届かなかった。



⇒#03