「そいつ等に構うくれぇなら、手前の状況…、どうにかしようぜ。馬鹿しそうなら、いつでも止めてやっから。そいつ等以上に笑ってやれよ。
デキそこねぇのオトナになんか、テメェ等みてぇになんかぜってぇならねぇって鼻で笑っとけ。大体辛いなら相談くれぇしろ。面倒バッカ掛けやがって」


「辛い…? つらくは…、ないさ。
家はツマラナイ…が、学校は楽しいし、チームもある…。充実はしている」


なんで家のことで辛いと思わないといけないのか、自分には理解できない。

「疲れることはあるが」

シズは軽く笑声を漏らした後、腰を上げてアパートの窓辺に歩んだ。
 

窓を開けて夜風に当たるシズの、心の闇を見つめ、見つめて、俺は片隅で思う。

シズ、家族のことで辛いって思うのにさえ疲れているんだ。

家族に関しては心が麻痺しているのかもしれない。

シズ、俺の家に泊まりに来た時に言っていたもんな。

幼い頃から家族は放任主義どころか、お互いがお互いに他人扱いで放置気味。

言葉にはいつも茨が巻いているって。


家族なのに他人扱い、か。

シズはいつ頃まで、そのことに関して心に痛みを感じていたんだろう?

これはある意味、虐待なんじゃないか? 暴力以外の。
  

「あ」

 
と、窓から景色を眺めていたシズが小さな声を漏らした。

何かあったんだろうか、副リーダーに視線を投げると彼は上体を乗り出して下を見つめている。

眉根を寄せていた。

窓枠を握り締めるその姿に、まさかっと懸念を抱く。


刹那、シズは畳を蹴って走り出した。


「シズ!」


逸早く反応したヨウが背を追い駆ける。


残された俺はといえば、「ちょ」窓は全開だし、シズの荷物は放置されているし、どうすればっ!

と、とにかく急いで鞄を持って窓を閉めて、俺をひとりでこんな部屋に置いて行かないでくれって二人とも!