「なあケイ。此処まで頼んでるんだし、やってやったらいいじゃんかよ。
アンタ、習字とチャリしか取り得ないんだし、力が発揮できるチャンスじゃん」

 
やり取りを遠巻きに見ていたモトが呆れた様子で肩を竦めてくる。
 

「ぜぇったい嫌に決まってるだろっ、堤さんはともかく毒舌の波子がいるんだぞ! 関わってもロクなことっ……あ」


しまった、本人の前であだ名を口走った。

背後から感じる禍々しい怒気に田山圭太は青褪めましたとも。

次の瞬間、後頭部にグーパンチを頂き、俺はしゃがみ込んで悶絶。

「宣戦布告と見たわ」

上等よ、絶対にあんたの自尊心を砕いてやるから、このヘボ。


フンッと鼻を鳴らして、「勝負に逃げたら」あんた、一生負け犬だから、と好き放題言いやがった。


は、は、腹が立つっ、まじこの女っ!

どんだけ田山圭太がおキライなんですか?!


ブッチン切れた俺は、頭部を擦りながら腰を上げると挑発してくるキャツに満面の笑みを浮かべた。
 

「じゃあ負け犬でいいです。俺は引き受ける気、毛頭アリマセンし?
まあ、いっつも俺に負けていた犬は何処のどなた様だったか?

俺が負け犬なら、誰か様は何犬になるんでしょうねアハハハハハ」


「なっ」


「というか、勝手に目の仇にしてくれちゃって超迷惑してることに気付いてます? KY? 貴方様、KYですか?」