てか、あんまり俺の悪口言わないでくれよ。
過剰反応する奴が倉庫にいるんだから。ほっら見ろよ、あそこで苛々しているわんこを(キヨタ「あいつっ。ケイさんの悪口を悪口を悪口を」)。
今にも食って掛かりそうだ。
頼むから抑えてくれよ、キヨタ!
俺を愛してくれるのは嬉しいけど、めんどくさくなるだけだから!
「で、結局何の用? 俺、もう習字をする気もないから、こっちとしては馬場さんの勝ちでいいんだけど。習字の話ならお断りだよ。お断り」
「はあ? 勝ち逃げする気? あんた、サイッテー!」
………、なんでそうなるかなぁ。
ガックシ肩を落とす俺を余所に、堤さんが目を丸くして落胆の声を上げた。
「え、えぇええ。た、田山先輩。習字、もうやらないんですか? 毛筆も? あんなに字、上手だったのに!」
「うん、俺が最後に筆を触ったのは中二だし。もう丸三年も筆を触ってないから腕も落ちているよ。なに? 会いたいってやっぱり書道関連?」
俺の問い掛けに堤さんが小さく頷く。
実は習字を頼みたかったのだと話を切り出してきた。
曰く、堤さんと馬場さんは他校の書道部に属しているらしい。
各々書道活動に勤しんでいるらしく、今度地区の合同書道展覧会があるらしい。
どこかのビル会場を借りて、各々高校から決められた作品数を出展しなきゃいけないらしいんだけど。
「私のいる書道部。人数が三人しかいなくって。しかもひとりは幽霊部員、だから実質二人でしているんです」
だけど片割れも、先日体育の時間に手首を捻挫しちゃって。ひとりで出展しないといけなくなったんです!
でもでも私、硬筆ばかり級が上がっていて毛筆はからっきし。
とてもじゃないけど、ひとりじゃこなせなくって。顧問の先生と頭を抱えている状況下なんです。習字の上手い波子先輩に頼もうとしたんですけど、
ほら、彼女も書道部に属していますし、今回の展覧会は合同ですから字でばれかねない。
習字が上手な人なんてなっかなかいませんし…、どうすればいいんだろうって途方に暮れていた時、波子先輩が田山先輩に頼めばいいんじゃないかって提案してくれたんです。
私はハッとしました。
そうだ、波子先輩よりも級が上だった田山先輩なら…あ、え、波子先輩、睨まないで下さいよ。
……ゴッホン、とにかく田山先輩なら習字が上手だし、書道部にも入ってないとお聞きしていましたから。



