んでもってああ、思い出したと俺は独り言を零した。
あの子は習字教室で一緒だった堤(つつみ) ひなのさんだ。
ショートカットでちみっこい身長をしている。ココロと同じくらいの身長っぽい。
えーっと、確か俺の一つ下だったな、まったく喋ったことはなかったけど。
……ほんと、これっぽっちも接点なかったよな? 俺と堤さん。
フレンドリーにお久しぶりですっつー関係でもなかった気がするんだけど。
だからか、挨拶をされて違和感バリバリ。
尤も会いたくなかった馬場さんと、まったく接点のなかった堤さんのご登場に、逃げ腰の俺は仕方がなしに行動を起こす。
逃げていても一緒だよな。無視なんてこんな状況下じゃ無理だし。
はぁ、ほんっと天下の荒川チームのたむろ場まで乗り込んでくるなんて、こいつ(と堤さん)は度胸がある。
おっもい足取りで、ある程度の距離を保ちつつ、チームメートの注目を浴びつつ、俺は出入り口の枠に寄りかかって二人に久しぶりとご挨拶。
「うっさいわよ」
このヘボ山、毒づいてくる馬場さんはうぇっと俺に舌を出してきた。
「いつ見ても余裕そうな面してるわねっ。
なによ、たかが毛筆と硬筆の級がアタシよりも取るのが早かったからって! ヘボよヘボッ!
こんな奴にいっつも負けていたなんてっ、クソ野郎!」
………、これだもんなぁ、この人。
俺が先に級を取ったことを根に持ってる。
ほんっと中学卒業以来の再会だけど、ちーっとも変わってない。腹が立つくらい変わってないよ。
マジ男だったら拳骨の一発でも入れたいところだぜ! でも相手が不良なら無理なんだぜ!
それが田山圭太っ、いつだって平和を愛するジミニャーノのポリシー!
……という名の自己防衛!
無闇に殴ったりはしません!
というか人は殴ってはいけません!
小さく溜息をつくと、「余裕ですか?」また余裕ですか? え、田山クン、と一々突っ掛かってくる。
「あんた、噂には聞いてるわよ。不良のパシリになったんですって? ははっ、あんたならナリソー。ウケる。ナニ、そのピアス。ちっとも似合ってないわよ」



