「なんだよあいつっ、今更俺に会いたいとかどの口が言ってるんだよっ。
畜生ッ、毒舌の波子めっ。あんの悪霊! 疫病神! 田山の敵! 塩、誰か俺にお清めの塩っ!
あいつに関わったら最後、災難しか降ってこないっ…、俺が嫌いなら関わってくんなよっ。これなら日賀野と会った方がマシっ、だ!」
翌日の体育時間。
体力測定をしていた俺は持っていた握力計を壊れんばかりに握り締める。
「うっわ。48」
結構いったな、ペアのヨウが握力計の針を見て口笛を吹いた。
去年が確か40だったもんだから、これは自己ベスト新記録だ。
どんだけ俺、握力計に力を籠めてるんだろう?
いや気持ち的には壊してしまいたいくらいに興奮しているんだけどさ。
鼻息を荒くする俺はヨウに握力計を押し付ける。舎兄はあっちゅう間に50を超えていたけど、驚くことなかれ。
だってこいつ、すこぶる喧嘩強いもん。
俺より握力が下だったら、こいつ本気でしていないな? ってフツーに疑うし。
「にしてもよ」体力測定用紙に測定結果を記入したヨウは、気ダルそうに次はシャトルランか、と吐息をついて俺を見やってくる。
「ケイがそこまで拒むのも珍しいな。テメェってどんな奴でも大抵、お得意の調子ノリで受け流すだろ? 苦手なヤマトだってノリで流してるだろうが」
面白半分に聞いてくるヨウ、俺は脹れ面を作って返答する。
「日賀野は嫌味を吐きながらもノリを受け止めてくれるじゃんか? けど毒舌の波子の異名は“調子ノリキラー”。
つまりノリを斬り捨てられるんだよ。だから俺や浩介、健太が苦手にしててさ」
「ああ、なるほどな。そりゃあテメェ等にとって辛いわけだ」
能天気に笑声を上げるヨウは、ダルくなったと体育館の壁際に向かう。
当然のようについて行く俺は舎兄と一緒に腰を下ろして、ペンキの剥げかけた壁に寄りかかった。
向こうでは体育の教師の指示に従順なクラスメートが反復横飛びをしたり、長座体前屈をしたり、腹筋をしたり、測定に勤しんでいる。
「あっれ、もう休憩?」
俺達のサボりに逸早く気付いた透がペアを置いてこっちに歩んで来る。
ちなみにペアはあんまり俺達に関わりたくないのか、距離を置いて佇んでいた。



