生唾を飲みながら、俺は席を立って前橋と一緒に教室を出た。

「はぁあ」大袈裟に溜息をつく前橋は、肩を並べる俺の頭を叩いて問題を起こすなよ、と愚痴を零した。

目を白黒させる俺は、

「何かしました?」

恐る恐る聞き返す。
そしたら前橋、自分の胸に聞けって突っ返してきた。
 

な、なんだよ。
 

そんなこと言われても思い当たる節が無いんだからしょうがないじゃないか!

焦る俺に対し、

「まさか新入生を相手取るなんてなぁ」

流石に想像もつかなかったぞ、前橋は苦虫を噛み潰したような顔を作る。


新学期早々ナニやらかしてくれるんだ的目で俺を見てくるけど、新入生? 相手取る? 意味不明。略してイミフー。
 

ワケも分からず、俺は前橋と共に足を生徒指導室へと向ける。
 

中に入るとそこには二人の男子生徒が…、真新しい制服からして新入生みたいだ。

曇天模様の顔を作っている二人は、俺等が入って来るや否や瞬きの回数を多くして、こっちを凝視。俺も二人を凝視。
 

うーん、俺等初対面ですよね? 取り敢えず、挨拶からしてみっか?

会釈してみると、向こうもぺこりと会釈をしてくる。


うん、第一印象は好印象っぽい。良かったよかった、でも君達…どなた?


向かい合うように席に着かされた俺は、改めて新入生を見つめる。

向こうも俺を見つめて、俺も新入生を見つめて、見つめて、見つめられて、エンドレス。


微妙な空気が両者に流れた。


えーっとまさか、お見合いごっこでもしようってか? 野郎同士で? 担任は親御役みたいな?


いや楽しくないだろ…それ。