仄かに苦味を舌で味わいつつ、蓮は並列しているビリヤード台の一角に視線を投げる。
そこには副リーダーと熱心に話し合っているヨウの姿があった。
時折、「なんで連絡がねぇんだよ!」携帯を取り出しては舌を鳴らしている。
外出している仲間を親身になって心配しているようだ。
まるで我等がリーダーを見ているよう。
リーダーとヨウの馬が合っているのは、ああした似た面を持っているからだろう。
―――…さすがはあの舎弟(アイツ)の兄貴だと思った。
ビリヤード台の片隅に置いていた灰皿を手に取った蓮は、それに灰を落とす。
肩を並べる二代目舎弟に手渡せば、「ドーモ」灰皿は受け取らず、灰だけ落としてきた。
よって自分の手で、また灰皿をビリヤード台に戻す羽目になる。
「ケイ達から連絡がないってピリピリしてるな、荒川」
桔平が話題を振ってきた。
「だな」頷く蓮は、特に舎弟が傍にいないからなんじゃないかと肩を竦める。
本当にあの二人は仲が良い。
だからこそ気が立っているのだと、蓮は思って仕方がなかった。
自分も同じ立場だから言えるのだが、舎兄弟というものは不思議な繋がりで友達でも親友でも兄弟分でもない、また違った関係として成立する。似つかわしい言葉を使えば、そう…、相棒と言ったところか。
「あぁあくそが!」
電話してもコールだけかよ、ヨウが地団太を踏んでいる。
一時間以上経っているのだから、連絡の一本でも寄越せといったところだろう。
憂慮がそろそろ憤怒に変わりつつある。
「ヨウちゃーん短気っぽ」
ワタルがケラケラと余計な指摘したものだから、
「俺的には待った方だっつーの!」
怒声を上げて大反論していた。
この時を持って憤怒に変わった瞬間でもある。
「仲間が大事なんだろうな」蓮がぼやけば、「お前も人のことは言えないだろ」脇腹を肘で小突かれた。
やや勢いづいていたせいか、痛みが走る。