挙句。


「真っ直ぐに戻れば、奴等と遭遇しかねないからな。大回りも大回りして戻るぞ。
たむろ場手前までくりゃ、向こうも手出しすることは不可だろうしな。遭遇しねぇよう、大回りで戻る。いいな?」

「え、えぇええ? 俺っち、かんなり体力消費してるんだけど! 制服だって濡れてるから、どっかで着替えたいし」


「あ゛ーん? また鬼ごっこしてのかゴラァ。冗談じゃねえ。男なら黙って歩くだ、阿呆」

 
根性がねぇ奴は叩きのめすからな、濡れたブレザーを脱いでそれを肩に掛けるタコ沢はさっさと歩き出した。
 
「大回りって」俺自身も引き攣り笑い。

此処から大回りするとなれば、一時間は歩かなきゃいけなくなるんだけど。


しかし漢・タコ沢は一度やると言ったらやる男らしい。

「さっさと来い」立ち止まって顎でしゃくってくる。


ということで俺とキヨタは泣く泣く歩み出した。

この機に俺達もタコ沢のように根性スキルを身に付けるのも良いかもしれないな!
 

……、無理、俺には根性なんてこれっぽっちもねぇよ!


うぇっ、制服が濡れているよっ、気持ち悪いよっ、着替えたいし、もうちっと休憩したーい!

 
「タコ沢ってマジ鬼だよな。キヨタ、ごめんな。俺に付き合わせちまったせいで」

「俺っちはいつだってケイさんと運命を共同にするっス」
 

「さすがはブラザー」「うっす。兄貴」顔見合わせて俺達は空笑い。


小さな吐息をつくと、ズンズンと歩いているタコ沢の背を重い足取りで追い駆けたのだった。


夜風が身に沁みるのは絶対に体が濡れているせいだよなっ…、ヘ、ヘッ、へーックシュン!



⇒#08