『言っとくがヤられんなよ、荒川がうっせぇからな』

「オーケー。俺もヨウにカッコつけてきた手前、ヤられるのはちょっち気まずいっ…。タコ沢も気を付けろよ、キヨタ! 掴まれ!」

 
携帯を投げ返して、俺はペダルに足を掛けるとそのまま勢いよく発進。

がくんと揺れたせいか縋ってくるキヨタの爪が肩に食い込んだけど、危うく呻きそうになったけど、それどころじゃない。

逃げないとこっちの身が危ないっつーの!

チャリを運転しながら俺は左側から感じる威圧、否、殺意と気配、そして姿を確認。

俺達の逃げる姿に悟られたのだと気付き、向こうは駆け足で路面へ。
そこでバイクに跨り、俺達の後を追うという戦法らしい。

単純明確有効的なお馴染戦法だよ、マジ最悪。


「なんでバレたんだよ!」


まだ任務も何も畜生もしていないぞ、俺は嘆きながらペダルを全力で漕ぐ。
 

俺とキヨタ、チームではまるで目立たない身形なこと極まりないのに。

やっぱタコ沢の言うように監視されていたんだろうか?
楠本は元浅倉さん達のチームメートだし、たむろ場を把握していてもおかしい話じゃない。

ということは、俺達の出て行く姿を目撃してつけて来た?

道理には合うけど、それだけじゃなんとなく胸に引っ掛かるものがある。
 

とか、思案を巡らせている場合じゃない。


俺は荒々しくハンドルを切った。二人乗りに慣れていないキヨタは、俺の荒運転についていけていないみたいだけど堪忍な。

俺も今は気遣える余裕がない。


「キヨタ。数把握できるか?」

「数っスか」


背後を振り返る弟分は目分量で三台だと教えてくれた。
ということは数的に三人以上、六人以内ってことだな。

バイクの二人乗りは想像できても、三人乗りは危険極まりないしな。

タコ沢サイドがどれくらい人数を回されたのか分からないけど、総計して十人前後。三人の俺達じゃ圧倒的に不利だ。
 

ヨウ達に連絡したいけど、まずは敵を撒くことからしないと落ち着いて説明もできやしない。