「キヨタ。お前さ、道を覚えるのは得意か?」

「え? 方向音痴ではない方っスけど…、覚えるのはどうッスかね。なんでっスか?」
 

「さっきも言ったと思うけど、俺くらいの土地勘ならやる気さえあれば誰だって身に付けられる。チームに土地勘の長けた奴が増えることは好都合だし、キヨタが道に興味を示しているなら尚更だ。
どうせ俺はお前を舎弟にする予定であるし、舎弟には意味合い的に“後継者”が含まれているんだ。お前、この機に道を覚えてみないか?」


「俺っちがっスか?!」そんな無茶な、町内の裏道その他諸々を網羅できるオツムなんて持ち合わせていない、と弟分は頓狂な声で物申す。

そんなことはないと思うんだけどな。
キヨタはヨウみたいに道に無頓着じゃない。

道に興味を示している。それだけで覚える第一歩を踏み出しているんだと思うんだ。


土地勘が長けた奴が増えてくれたら俺自身もスゲェ助かるしな。


「今度覚えるために」色んなところをチャリで連れまわしてやるから、ちょっとやってみようって、俺は振り返って一笑。


「今からでもやれるぞ。例えば、此処の裏道は四つ角トンネルの大通りと繋がっている。はい、インプット開始」

「うぇえええ?! えぇえっと此処の裏道は四つ角トンネルの大通りと繋がってるんっスね。でも何処をどう行けば…、もしかして向こうの繋がっている道っすか?」


「ポンピン。これで一つキヨタは道を制覇したな。目指せ、ロードマスターカッコ地元編カッコ閉じる! ロード王に俺はなるっ! さあ言ってみ、ブラザー!」


「無茶苦茶っスよ!」俺の無茶振りに嘆くキヨタだけど、ちゃーんと道を覚えようとしてくれているところが良い子だよな。

なんか良い弟分を持ったって気分。


これがヨウだったら道を教えても途中で覚えることを挫折、わっかんね・メンドクサイ・覚えなくても俺がいるからいいやで終わっちまうという。


何度か道について説明してやったことがあったけど、あいつ、覚える気がまるでゼロだからな。


チームのリーダーだから、少しは道を知っておいた方が良いと思った舎弟の親切心を見事にへし折ってくれやがってからにもう。


ま、あいつが駄目ってわけじゃないけどさ。


「(こうやってチームや後継者を考えるようになるなんて、俺も不良っぽくなったよな。ほんと)ん? キヨタ。着信」

「はいっス。タコ沢からっスね」