連絡兼見張りはキヨタに任せて大通りを走る俺は荒々しくハンドルを切った。
「裏道に行くからな」口達すると、「ういっす」と返事。チャリに慣れていない弟分の手が俺の肩を握りなおしてきた。
落ちないでくれないでよ、相手に伝えて俺はペダルを漕ぐ足に力を入れる。
時間が時間なせいか視界が悪い。
裏道を走っていると、何処からともなく空き缶の鳴き声が聞こえた。車輪で弾き飛ばしてしまったようだ。
ガタガタ揺れるチャリの後ろに乗っているキヨタは、見知らぬ裏道を見渡して気を配っている。
「奇襲は」夜がやりやすいっすよね、ご尤もな意見に俺は肯定。
喧嘩を仕掛ける側ではないけれど、常識的に考えて奇襲は視界が悪い方がやりやすい。
経験上、いっちゃんデカかった喧嘩“五十嵐戦”も奇襲は夕暮れから夜が多かったしな。
「此処でどかーんと来たら俺っちがはっ倒すんっスけどね!」
「いやいやいや、やめてくれよキヨタ。現実になりそうだから」
どっかーんと襲撃されてみんしゃい、お前はともかく俺の寿命が縮まるから!
オゾマシイ想像をしてしまったせいで俺は軽く顔を青褪める。
カッコつけて危険な役を買っては出ましたが、できることなら喧嘩は回避してさっさとやるべきことはやってしまいたい。終わらせたい。戻りたい。
相変わらず俺って後先考えずに物事を決めちまうタイプだよな。
カッコつけるのが好きっていうか、その場の空気で判断しちまうっていうか、そういうところがヨウに似ちまったっていうか。
……ヨウに似ちまったのか、俺。
折角なら顔がイケてくれたらいいのにな、どうしてそこは似てくれないんだろう。
かるーく遺伝って奴を恨むぞ。
シャー、シャー。
回る車輪の音を耳にしながら、ハンドルを切っているとキヨタがこういう道もあるのかと、ちょっち裏道に興味を示した。
入ったことのない裏道だったんだろう。
純粋に道に対して興味を持っている。
こういう風に道を覚えたら町内を回るのも楽しいだろうな、能天気なことをのたまうキヨタに俺は少しばかり思案。
普段ヨウを後ろに乗せている場合、裏道を通ってもさして興味を示さない。
何故なら俺に道のすべてを任せているから。
それはカーナビ田山を信頼してくれている証拠でもあるんだけど…、俺はキヨタを流し目にして口を開いた。



