「よし、じゃあ盲点の件もそれで決まりだ。可能性がある限りの場所は洗ってみよう。
後は奇襲を仕掛けられそうな場所を幾つか候補に挙げて。
そうだ谷沢、お前はいつもどこで情報を収集っ、イッデー!」
ゴチンと脳天に拳骨と名目される隕石が落ちてきた。
アウチ、目から星が飛び出そうだったぞ、今の威力。
「ア゛ッー! なんでケイさんを殴るんだよ!」
キヨタは無礼なこと極まりないと言ってくれるんだけど、いやまったくもってそのとおり。
な、何するんだよ。
今度はちゃんとした名前で呼んだじゃないかよ。
なんで殴られなきゃいけなっ、「俺はタコ沢だ!」「はあ?」俺はつい間の抜けた声音を出してしまう。
「あ゛?」ガンを飛ばしてくるタコ沢に、「谷沢だろ、お前?」俺はおずおずと名を指摘。
よって妙な沈黙が俺等の間に流れた。
「…しまった…。つい癖でっ、急に呼び名を変えるんじゃねえぞゴラァア! 貴様のせいで白けた空気になっただろうが!」
り、理不尽な怒られ方をしてしまった。なんだってんだ一体。俺は間違っちゃないだろーよ。
気を取り直して俺はタコ沢にいつもどこで情報収集をしているのかと訊ねる。
弥生や利二とは違った情報通で、不良の内情にやたら詳しいけど何かルートでもあるのか?
俺の疑問にタコ沢は街を歩いていたら適当に耳にすると返答。
「俺も野良だからな」
不良の内情をついつい入手してしまうのだと言う。
お前、今はヨウのパシリ不良だよな。野良じゃねえよな。荒川のチームメートだよな。
という余計なツッコミは呑み込んで、よくよく話を聞いてみると、なんというか、タコ沢は人様の不良事情に巻き込まれたくないから、そうやって情報を入手しては回避していたんだと。
自分から喧嘩は売ることはあっても、群れたい性格じゃない。
だから回避するために情報収集。
そんなことばっかしていると、自然に不良の情報が集まる場所を知ってしまうのだという。
それが俺達のチームの糧になっているのだから、不思議なもんだよな。
俺自身も自分のチャリの腕と土地勘が役立つ日が来るなんて思わなかったし。



