一々気にしてたらやってられないぞ、俺の能天気発言に利二は呆れて肩を竦めた。

こうして何事も無く教室を離脱。
いや、正しく教室を飛び出してBダッシュをしたから、事が起きる前に離脱成功。

教室から前橋の怒声が聞こえた気もしたけど、今は、今は教師の怒りに構ってられなかった。

だって浅倉さんがヤられたんだっ、あの楠本に。
向こうチームは騒然となっているに違いない。


―…何より、蓮さんが心配だ。

 
(ナイーブになってたからな蓮さん。……、まさか楠本は故意的に浅倉さんを狙って?)

 
可能性は大だな。

厭に高鳴る鼓動を抑える術もなく、俺は廊下を駆けながら携帯を取り出した。

電話を掛けるのは俺等のチームで他校に通っている仲間達―…。
  
  
 

浅倉さん達のたむろ場は交差点四つ角、某ビル二階ビリヤード場だ。

古汚い倉庫や有り触れた喧(かまびす)しいゲーセンを拠点にしている俺達と違って、向こうチームは室内にたむろ場を設けている。

超贅沢だと思うよ。

だって室内、しかもビリヤード場を拠点に出来るなんてさ。
誰かのコネで拠点にしてるんだろうけど、堂々悠々室内にたむろ場を設けている浅倉さん達は羨ましい。
 

狭い階段を上った向こう。

二チームを受け入れてくれる広々としたビリヤード場で、四時ピッタシに集会が始まった。


仕切っているのはヨウと涼さん。浅倉さんの姿は見えない。

彼は病院で手当てを受けているそうだ。
幸い、頭部を三針縫う程度の怪我らしく、入院にまでは至っていないそうだ。


詳細を聞くと浅倉さんはとある路地裏で楠本、もしくは率いる仲間にやられたそうな。

彼がなんで路地裏に赴いたかっていうと、そこで仲間がヤられたと情報が入ったため。


心配して助けに来た浅倉さんに奇襲を掛けたって寸法だ。


浅倉さん以外にも仲間はいたそうだけど、皆、ヤられてしまったとか。なんだかゲリラ戦を聞いている気分だ。


「多分楠本は」


自分達の支配下にしている“廃墟の住処”でどんちゃんする予定は毛頭ないんだろう、と桔平さん。