……あっはー、デジャヴ。
 
またテーブルが蹴られた。
 

顔を上げれば、これまたおっかない不良さん方が三名。

「お前等、嘉藤といただろ」

あいつを出せ、とか言われちまったもんだからな、俺は頭を抱えたくなった。

あいつ、いっぺん殴り飛ばして良いか?
マジ余計な、トラブルを運んでくる余計なところまでヨウに似ちまいやがって! 


ブン―、俺の目の前に拳が飛んできた。


どうやらは相手は焦れたらしい。
危うく顔面をパンチされそうになったけど、その前に向かい側に座っている弟分が受け止めてくれたから痛い目に遭わずに済む。

ググッと相手の拳を握り締めて、ニッコリとキヨタは笑顔を作る(でも目が笑ってねぇええ)。
 
 
「あんま舐めたことすると、俺っちが相手するっスよ。―…てか、兄貴に手をあげようとした時点で、もう俺っちの中でお相手するって決まっちまってるっスけどね」
 
 
全員纏めて、表に出やがれっつーの。

こうしてブラザーが相手を挑発したもんだから、向こうが焚きついて母音に濁点をいっぱいつけながら上等じゃないかと凄んでくるんだ。

おい、マジかよ。
俺、超喧嘩できないんだけど…、チャリも学校だし…。
 

だけど、キヨタをひとりにするわけにもいかないだろ。


あいつ、チームイチ喧嘩ができる男だから(合気道経験者の受賞称号付き)、誰かストッパーがいないと病院送りにしかねない。

てか、不良さん方、俺等が荒川チームの一員ってことご存知なのか?

さっきの奴等なんて、ヨウ直々に喧嘩に赴いちまったんだけど。
 

「さっさと来いよ」

仕切るキヨタが相手を挑発しまくって店内から出て行く。

舌打ちを鳴らしながら、不良さん方も店内を出て行き、俺自身も席を立ってトボトボと店内を後にした。
  

ははっ…、こんな喧嘩スキーばっかな奴等でも一応、いちおう俺の大事な居場所だよ。喧嘩がなければもっと大事な居場所だ。


……はぁーあ、なあんでこうなっちまうんだろう。


泣きたい気持ちでいっぱいの俺だった。



⇒#07