「無理だと思うよ。避けられるなら、最初から浅倉さんが避けるよう努力してるだろうし」

 
嗚呼、俺自身も今回の喧嘩は避けたいところだ。

喧嘩が苦手どうのこうのじゃなくて、勝敗どうのこうのでもなくって、喧嘩の内容がな…、最初から後味の悪いものだって目に見えてるからなぁ。

浅倉さん達の願い申し出だから協力に承諾はしたけど、勝っても負けても後味が悪いものだと分かっている。
 

だからこそ気鬱なんだ。
 

今回の喧嘩は“エリア戦争”の延長戦だしな…、あの喧嘩もぬめぬめしたような後味の悪い喧嘩だったし。

また元浅倉チームと衝突しないといけないなんて、しかも今回は和解の「わ」もなさそうだし。

寧ろ向こうはガンガン復讐しようぜモードだし。
どーなるんだろうな、延長戦。


机上に頬杖をつき、俺達は揃って溜息をつく。

「ヤになっちゃうわね庸一さん」

俺のぼやきに、

「ほんとね圭太さん」

ヨウがノリに乗ってくれる。

ほんと、マジで嫌だ。


今回の喧嘩…っ、蓮さんのことを想うと尚更「お前等、真面目に反省文考えてないだろ」
 
 
………。
 

シケモードエンド。

はい、現実に思考チェーンジ。
 

顔を上げればパイプ椅子に座った俺等の担任が青筋を立てながら、ノート点検をしていた手を止めてこっちを睨んでいた。

教卓の上でコツコツと赤ペンの頭を叩いている前橋は、俺等と同じように頬杖をついて今、何行書けたかと質問を飛ばしてくる。


俺は原稿用紙に目を落として愛想笑い、「三行半です」

ヨウも原稿用紙に目を落として仏頂面、「書き出し三文字」


ははっ、兄貴最強過ぎっ…、もう30分経ってるのに三文字。

俺よりひでぇじゃんかよ。

ちなみに三文字って何を…、反省文? これタイトルじゃねえかよ。


それ書き出しって言わない。