こんな奴、初めてだった。
戸惑いばかりが胸を占め、どうすればいいか分からず、質問をしたことがある。
なんで傍に置いてくれるのか…、問題を起こしたのに。
自分の疑念に榊原はこう答えた。
『やんちゃ過ぎるだけだろ。馬鹿みてぇに暴れてもいいが…、その力、少しはチームの発展に使うことだな。ノラ』
この人なら居場所を自分に与えてくれるかもしれない、思った瞬間だった。
自分の有り余った手腕を咎めもせず、問題行動も注意程度で、いつまでも傍に置いてくれる榊原なら…、自分のことを理解してくれるに違いない。
案の定、榊原は自分の理解者でいてくれた。
とても自分を可愛がってくれたし、当たり前のように居場所を作ってくれた。
チーム内では考え方の違いから、摩擦ばかり起こすと敬遠されていたが…、それはチームを思ってのこと。
『あー、浅倉は甘いんだよな。なんのためのチームだか。いっそ、リーダーの座から下ろしちまおうか』
『サキさんならできますよ。リーダーに相応しいって俺、思ってますし。断然器もあると思います!』
『だからなんでサキ…、女みてぇに呼びやがって。まあいいが。
なあノラ、例えば俺がチームを抜けるとする。その時、俺はお前を連れていくが文句はあるか?』
『いいえ。喜んでついて行くに決まってるじゃないですか』
『そうか』一笑する榊原に、
『そうです』自分は自信を持って答えた。
甘っちょろいと浅倉の考えに愚痴を漏らし、シビアな思考を持つ榊原が自分は大好きだった。
拾ってくれたことを感謝したほど。
なのに、嗚呼、なのに…。