◇ ◇ ◇
 

時刻:翌日の放課後。

場所:いつものたむろ場(倉庫側)


只今の状況:田山圭太は弟分にブンブン尾を振られている。ちなみに現在進行形である。まる。
  


「―――…うわぁあああケイさんっ、穴あけたんっスか!
昨日ワルデビューするって言ってたむろ場に来なかったから、どんなことするんだろうって思ってったんっスけど、まさかピアスをあけちまうなんて! 地味にすっげぇっス! なんか地味に雰囲気違うと思ったらっ、地味にピアスしてるっス!」 
 


「地味にすげぇっスよ!」目をキッラキラさせて見上げてくる興奮気味のキヨタに、俺は引き攣り笑いを漏らしている真っ最中だった。

キヨタ、お前って超正直者だな。

何度も地味を連発しやがって…、そりゃあ地味ですが、地味なんですが、一回の台詞に三回も四回も地味を連呼しなくてもいいじゃないか。

本当に俺を尊敬してくれているのか? お前。
 

ワンワンキャンキャン尾を振って構ってくるキヨタの頭部を小突く。
 

その隣で、「結構変わったと思うけどな」モトが率直な感想を述べてきた。

頭の後ろで腕を組んで、

「ケイって超真面目だったから」

ピアス一つで空気が超ちげぇよっとぶっきら棒に肩を竦めてくる。
 

それもまた誇大な表現だと思うけど…、んー…、利二達にも言われたな、同じこと。
 
  
なんでもピアスひとつで、取り巻く空気が変わったとか。

ピアスをしていない側から見ればいつもの田山圭太なんだけど、ピアスしている側から見ればなんか突っ張っているツンツン田山圭太のように見えるらしい。

謂わば空気に茨が巻いたカンジだと指摘された。


俺を知らぬ地味達からすりゃ近付きがたい空気になったんだと。


まさしく不良に近い空気だと言われちまって俺は「嬉しいんだぜ!」と、思うわけもなく、ちょいと心中で落ち込んだ。