「そういうわけじゃないけど、なんとなく今のままじゃ駄目な気がした。あいつ、なんっつーか結構俺に気遣うところがあってさ。
兄弟分じゃお互いっ…、だーけーどっ、俺は喧嘩とかろくすっぽう出来ないし! イケメンでもなきゃ、不良でもないし!」


「安心しろ、おめぇはじゅーぶん不良だっつーの。てか、イケメン関係ねぇだろうが。手腕も、今更な悩みじゃね? 今までチャリでカバーしてきただろうが。
立派に俺の舎弟もしてきたんだし、そりゃ自信にしてもいいと思うぜ? 過小評価し過ぎだっつーの。ごちゃごちゃ悩むより、行動に起こしちまえって」


すったもんだなことを言ってくれるな、ヨウも。

 
「簡単に言ってくれるなよ。お前みたいに行動力がないんだよ、俺は」

「だから、取り敢えず行動に起こして舎弟にしちまうんだって。後はゆっくり舎兄弟になっていけばいいじゃんかよ。俺等だって、最初はノリだけでなっちまったんだし」

 
最初から舎兄弟じゃなかっただろ、俺等。

ヨウに言われて、確かにそうだと俺は相槌を打つ。

最初こそ俺等の関係はなんちゃって舎兄弟だったっけ。

今こそ本当の舎兄弟だったけど、それまではなんちゃって舎兄弟だった。


“なんちゃって”のせいで色々傷付くこともあったっけ。
 

―――…そうだ、俺達は最初から本物じゃなかった。 
  

「ま、今日はもうごちゃごちゃ悩むのはやめだやめ。パァっと弾けようぜ! テメェのちょい不良デビューに祝して飲も…、ん? もう酒がねぇ。チッ、興ざめするじゃねえか。うっし買いに行くか!」


「はあ? まだ飲むのかよヨウ! 随分飲んでただろう!」

「なあに言ってるんだ。全然飲んだ内にも入ってねぇぞ。ほら、行くぜ」