「その不良二人の名前は――もう分かっているな?」


 それまで語り部になっていた男は、流し目で相手を見やる。

「んー。もちろんっ、ああああっ! 崩れた!」

 生返事ばかり繰り返していた相方は、崩れてしまったトランプタワーに深いため息つく。

「あと少しで完成だったのにな」

 悲しそうにトランプを掻き集める相方だったが、己の方を一瞥するや冷たく微笑んだ。

「五十嵐を討ち取った不良二人ってのは、荒川庸一に日賀野大和、だろ? さすがにぼくでも、名前くらい知っているよ。ふふふっ、五十嵐から地位を分捕ったことで、のうのうと毎日を過ごしているんだろうねえ。気に喰わないなぁ」

「気に喰わない、か」
「ああ、気に喰わないよ。だって彼らは不良だからね」

 不良という単語を聞くだけで虫唾が湧く。
 相方は小さく笑声を漏らすと、散らばったトランプの中から、お気に入りの一枚を手に取って端を口に銜えた。


「不良なんて邪魔なだけ。だから綺麗さっぱりに掃除しなきゃね。荒川も、日賀野も、不良とつるむ奴らは全部さ」


 銜えたトランプの柄――スペードのキングは妖しく、そして何かを予感するように沈黙を貫き通していた。


to be continued...