「あの日…ユーリに助けてもらった時、俺…ここに居たらしいんだ。」
ズタズタに切り裂かれた背中の傷がかなり酷かったとユーリは言っていた。
「…背中の傷…」
「…宿屋でもそれに反応したね。知ってんだろ?俺の傷がなんで出来たか…」
右京は忍の呟きにそう言うと上半身を起こした。
忍は手の甲を目の上に置いて表情を隠した。
「…なんで隠すの?」
「…隠してんじゃないよ…きっと今の右京じゃ言っても信じてくれないから…」
右京は忍の腕を乱暴に掴み苛立ちを露にした。
今にも泣き出しそうな忍を真上から見下ろす。
「…何でそんな顔すんだよ…」
何も答えない忍を見つめると彼女の目から涙が溢れ落ちる。
右京はまるで胸が鷲掴みされたように痛んだ。
優しくその滴を指ですくう。
「…なんで泣くの…?」
「悔しいの…私…何も出来なかったから…あの時…」
─あの時…?
何かを思い出しかけたと同時に背中に激痛が走った。
─記憶がちらつく…
「右京…あなたは多分思い出したくないのよ…」
このまま記憶を無くしたままなら人間として生きていける。
だけど…
─それじゃ何も解決しない─