「『私が、若くして会社を立ち上げたときから、貧しいながらも私を支えてくれていた妻…衣緒莉(いおり)に、私はすごく感謝していた。
…だが、子供をなかなか授からなかった。
それで私達夫婦の関係も、しだいに悪くなっていった。
結局は、私の八つ当たりだった。
衣緒莉を家に残し、私は…外で愛人をつくってしまった』」
ゴクッと、誰かの喉が鳴った。
…俺も口が渇き、掠れそうな声を潤す為に、少し口を閉じた。
芽衣の顔は見れない。
ただ俺は、まっすぐに手紙を見つめた。
「『それが湊爽緒の母、爽子(さわこ)だ。
爽子は…水商売だったが、愛想のいい、可愛らしい女性だった』」



