…あった。 ここにあった。 俺にしか描けないドレス。 それは確かに、ここにある。 だって芹梨が声を出して名前を呼ぶのは、俺しかいない。 俺はそんな芹梨の髪をゆっくりと撫でて、力強く言った。 「…描くよ、ドレス」 芹梨の為だけの、ドレスを描く。 それは他のだれでもない、俺にしか描けないもの。 俺を変える事ができるのも、立ち止まらせることができるのも、芹梨しかいない。 そして自惚れなんかじゃなく、今確かに思う。 芹梨を一番幸せにできるドレスが描けるのは、俺しかいない。