パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~

『じゃあね』と言って電話は切れた。



今夜の約束が出来なかった事がお互い心残りではあった。



奈桜は切れた電話を手にしたまま、頭の中で梓とのやり取りを思いだしては繰り返す。
それはまだ側に梓を感じていたいから。



梓の名前を呼ぶ代わりに深いため息が漏れる。




「奈桜さん、ラジオ番組の収録が押してるんで急いでもらっていいですか?」



おそらくさっきからノックをしていたのだろう。
マネージャーの石田が申し訳なさそうにドアを少し開けて、奈桜に声をかける。



「あぁ、…はい」



いつものように短く返事をすると携帯を握り締めて立ち上がる。




出ようとする奈桜と入れ違いに碧が入って来たが、伏し目がちに落ち込んだ表情に『お疲れ』としか声をかけられなかった。