「はい…」
心が部屋を出るのを見届けた奈桜は急いで電話に出る。
気が焦っているせいか、指がちょっともたついた。
「奈桜?」
「梓?」
見えてはいないが、お互い相手の存在を声で『確実な存在』と確認して安堵の表情を浮かべる。
「今、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
体中の血が、勢いよく全て耳に流れ込んで来るようだ。
「彼女の居場所が分かったの。南 花菜ちゃん…」
「えっ!?ホントに!?」
「彼女ね、うちの事務所が持ってる超高級マンションで軟禁されてるわ。部屋の中もドアの側も、事務所の人間がずっと何人もいて見張ってる。仕事以外では外にも出られないみたい。もちろん携帯も没収されてるし、部屋の電話も切られてる。おそらく親でも彼女と個人的に連絡取れないわね。仕事に行くのだって、何人お付きの人がいるの?ってくらいの人数で彼女を取り囲んでるらしいわよ」
「そっか…。やっぱりそうだよな。碧と連絡取るなんて絶対無理だな…」
力無い声でポツンとこぼす。

