パパはアイドル♪vol.２ ～奈桜ｸﾝの多忙なｵｼｺﾞﾄ～

「今、大丈夫？」



「えっ…あ……うん。大丈夫」



頭の中で瞬時に考える。
碧の事、心の事…
ほんの一瞬だけ、迷った。
でも、すぐに頭の中は『梓』で支配され、碧の事は電話が終わったらすぐに探そうと自分を納得させた。



「今ね、帰って来てるの。事務所に内緒で。イケナイんだけど、帰りたくて…」



「マジで!?いつ？」



奈桜の声が興奮から大きくなる。



「昨日。でも、いつまでいられるか…。会える…かな？」



梓は奈桜に会いたいが為に事務所との約束を破って、日本に戻って来ていた。
バレたらただでは済まない。
奈桜たち個人のレベルではなく、おそらく事務所同士の話し合いに発展する。



「…会いたい。ずっと、そう思ってた」



奈桜の優しい声が梓の耳に静かに流れる。



「………」



梓の目に、いっぱいの涙が溢れて行く。



「良かった…。思い切って帰って来て。…思い切って電話して。思い切って…良かった」



こらえていても、次第に涙声になって行く。



「梓…」



声はすぐここに聞こえるのに、その肩を抱き締める事が出来ない事が歯がゆい。