「アイツ、心当たりあるのか？」



閉まったドアを見つめ奈桜が泉に聞く。



「アイツを誰だと思ってんの？伊達に女の子相手に、占いやってないよ。全ては情報網。誰のどんな情報でも、欲しければ掴めるよ」



泉は真っ直ぐ奈桜の目を見つめた。



しばらくキョトンとした顔をしていた奈桜だったが、ふと我に返ると『そんなに見つめられたら好きになっちゃうよ』と笑った。



「碧、絶対早まるなよ。まずは彼女と会って話した方がいい。彼女も参ってるだろうし、どうしていいか悩んでると思う。事務所の人間にとやかく言われてお前の事も分からなくなってるかもしれない。色々な気持ちを払拭する為にもまずは会った方がいい。考えるのはそのあとだ。勢いで動くと、ろくな事がないからな」



泉は落ち着かせるように言う。


「とりあえず、これ食べない？」



奏がテーブルの上のサンドイッチに手を伸ばす。



「奏って、食べ物見ると幸せそうだよね？」



奈桜が奏のパクつく姿を見て笑った。



『南 花菜』との事を色々と聞きたかったが、誰も口にしなかった。
碧が言いたくないなら聞かない。



みんな、大物女優との恋愛はちょっぴり羨ましい気持ちだった。