「奈桜さん、急で申し訳ないのですが、今夜放送の『Ｚの劇団！！』の中で婚約発表して頂く事になりました。放送内容を1部変更して、その部分を生放送でＺが出演します」
朝、迎えに来た車に乗り込むなり石田が言う。
予想された範囲内ではあるが、あまりの早さに奈桜は驚く。
いったい、どうやって梓の事務所と話がついたのだろう。
『Ｚの劇団！！』はＺが毎回出されたお題に応じて、即興で1時間のドラマを作り上げるというバラエティー番組。
自分たちの冠番組で発表するのが、やはりベストだろう。
「分かった。・・・けど、」
「安心して下さい。水無瀬さんの事務所とは話がつきました」
「ほんとに？」
梓の事務所にはかなりの借金があって、それが大きなネックになっていたはずだ。
それを利用して青山柊が梓と結婚しようとしている。
金銭的な事をどうやってクリアしたのか？
たった一晩で。
「かなり大変だったですが。皆さん、徹夜です」
奈桜に気を遣ってか、石田は笑って言った。
