梓はとっさに電話をまた耳に当てた。
『ドクン!』と心臓が大きく音を立てる。
切らなきゃいけない思いと、時間を繋げたい思い。

何の迷いもなく後者を選んだ。



「切ら・・・ないで。まだ」



奈桜の静かな声が梓の胸に広がって行く。
心地いい感覚。



「時間、いい?」



「大丈夫。奈桜は大丈夫なの?明日、早いんじゃない?」



「大丈夫だよ。あのさ、大事な話があって。ほんとはちゃんと会って話したかったんだけど」



時間が止まればいい。
今、この数分だけでもいい。
ううん。ずっと。
2人で話している間、ずっと。