~止まれない~
「奈桜さん、」
迎えに来た石田の車に乗り込むなり、奈桜は目を閉じていた。
眠っている訳ではない。
眠れたらどれだけ楽か分からない。
その時間だけは、たぶん、頭を休められるだろうに。
石田に声をかけられ、奈桜はパッと目を開けた。
「何?」
ちょっと気だるい声がやけにセクシーに聞こえる。
石田はドキッとしてバックミラーをチラッと見た。
ステージで歌っている姿ももちろんカッコイイが、この、寝起きのような子供っぽい表情もイイ。
この顔を見れるのは、家族以外は自分だけだと思っていたのに。
石田は小さくため息をつく。
「あ、あの、今日のスケジュールですが。これからドラマの収録、合間に雑誌のインタビュー、そして・・・、ドラマが終わり次第、事務所に戻って社長から話があるそうです」
『来たな』と、奈桜の心臓が大きく打った。

