「桜、」
マーガリンをたっぷり塗ったトーストを食べ終えた桜を見つめながら、奈桜が真剣な顔で話しかける。
桜はそれに答えるように、大きな目をクリッとさせて奈桜の方へ顔を向けた。
「大事な話があるんだ。本当はこんな朝なんかにする話じゃない。もっとゆっくり、もっとちゃんと、言いたかった。でも、今のパパにはその時間がないんだ。急いでやらなきゃいけない事が起きた。それはこれから言う事に関係してる。とっても大事な話だから、ちゃんと聞いて欲しい」
奈桜は事を起こす前に、桜にちゃんと自分の口から言っておきたかった。
これだけはどうしても。
「分かった」
桜は可愛らしい声で言うと、きちんと座り直した。
いつもとは違う緊張が奈桜を襲う。
出来るだけ分かりやすく、出来るだけ傷付けないように、出来るだけ心のままに、伝えたい。
桜が学校に行くまで後40分。

