パパはアイドル♪vol.２ ～奈桜ｸﾝの多忙なｵｼｺﾞﾄ～

「水無瀬梓さんです」


監督に紹介され、梓が丁寧に頭を下げる。
微笑みを浮かべるその表情は、明らかに女優モードになっている。



「梓、国民的アイドルＺの雨宮クンと共演出来るなんて、光栄だろ？あの、国民的アイドルの雨宮クンだよ？忙しくて台詞なんて覚える暇ないんだから、気を遣ってやれよ。女の子たちに追いかけ回されて疲れてるんだから。それに、アイドルと俳優は根本的に違うからね。僕たち俳優には高い演技力が求められるけど、彼らには顔しか求められていないんだから。恥をかかせちゃダメだよ。ファンに怒られる。・・・まっ、共演と言ってもわずか数分のオーディションだけど」



柊は小バカにしたような言い方で、笑いながら言う。
好きな女を前に、奈桜をバカにして優位に立ちたいのか。
普通に考えれば、それが愚かな事だと気付くと思うが。
奈桜はそんな柊には全く目もくれていなかった。
目の前にいる、女優『水無瀬梓』とまた一緒に演じられる事にワクワクしている。
あの時とは違う。
今の奈桜にはちゃんとした『役』がついている。