「奈桜さん、そろそろいいですか?」
石田が『えっ!?』という顔で監督を見る。
まだ後2分、残っている。
例え2分でも、10分のうちの2分である。
「あの、まだ、」
「大丈夫です」
言いかけた石田の声を奈桜の声が消す。
奈桜は石田を見て小さく頷く。
石田は不安そうな顔で見守るしかない。
「では始めます。相手役の方は決まっていますので、実際にその方とやって頂きます」
ドアを開けて入って来たのは、
「梓」
思わず声に出てしまったが、小声だったおかげで気付かれなかったようだ。
あのオトコ以外には。
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