~幕が開く~
「奈桜さん、お願いします」
石田が険しい顔で奈桜を呼びに来た。
どうやら柊が終わったらしい。
奈桜は軽く深呼吸すると部屋を出た。
「雨宮奈桜です。よろしくお願いします」
通された部屋はさほど広くは無く、正面に3人、座っている。
真ん中にいる人が一番若く見えるが、監督だ。
初めてメガホンを取るって聞いている。
この人ならもしかして・・・と、奈桜はチラッと思った。
「佐久間監督、僕もこのままいていいですか?国民的アイドル、雨宮奈桜の演技を是非、生で見てみたいんですよ。国民的アイドルの生演技なんて、滅多に見れませんから。いいですよね?」
奈桜が振り向くと、後ろに青山柊がいた。
きっとわざと残っていたに違いない。
が、奈桜にとっては何の気にもならない事だった。
元々、マイペースな性質である。
『見たければどうぞ』という程度だ。
ただ、『国民的アイドル』を連呼した所が気にくわなかった。

