パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~

「マジで?」



ちょうどコーヒーを口に含んだところだったので、軽くむせながら聞き返す。
碧はゆっくりと首を縦に動かした。



「でも…さ、出ないだろ?怒られるけど大丈夫だろ?事務所が…何とかしてくれるだろ?」



その後は何と言っていいのか分からない。
何せ、奈桜はかなりのスキャンダルで事務所に迷惑をかけた。あの時、世間が奈桜に好意的に流れてくれたから良かった。
実際、社長までもがCMのスポンサーやレギュラー番組のプロデューサーに頭を下げに行っていた。



あの時、奈桜はこの世界で生きて行く事の大変さを、改めて知った。
全ては絡み合い、縛り合い、大きな力のあるものが支配して成り立っている。
逆らえば簡単に弾き飛ばされ、世間に嫌われれば救いようもない。
『スキャンダル』は命を削るほど大変な事。



そしてやはり、『アイドル』にとって世間に知れる『恋愛』はご法度なのだ。



自分たちはそういう『世界』に生きている。




「無理なんだ…」



こんなに落ち込んだ碧を奈桜は見た事がなかった。