オーディションが夜に入ったおかげで、その日のスケジュールは少し変更になった。
マネージャーの石田が方々に頭を下げたおかげで、時間的にゆとりをもってオーディション会場の控え室に入った。
幸い、誰もいない。
まだ時間に余裕がある事を確認した奈桜は、すこぉし目を閉じ、ちょっとだけ、眠った。
台詞のチェックよりも、精神統一よりも、眠る事を選んだ。
それほど眠かったのかもしれない。
「奈桜さん、奈桜さん!」
誰かの声は聞こえるが、あえて確認したくない。
奈桜はちょうど夢の入り口の扉を開けようとしたところだ。
目を開けたくはナイ。
「奈桜さん!起きて下さい!帰ります!」
「えっ!?」
石田の『帰る』という言葉を聞いて、慌てて目をこじ開ける。

